RTOG
東北大の高リスクIMRT治療、ハイリスク前立腺癌への治療戦略で紹介した東北大の川崎芳英氏の論文よりThe Radiation Therapy Oncology Group (RTOG) に関連することに言及する。以下のように書いている。
ADTの期間やタイミングについては RTOG 8610 にて外照射単独よりも短期のADTの追加がOSの改善効果があることは周知のとおりである。
文献としてRoach M 3rd et al. J Clin Oncol. 2008 Feb 1;26(4):585-91が示されている。この論文の概要紹介はここでは省略する。
ブログ 探索の日々では延々と藤野邦夫『前立腺ガン最善医療のすすめ』について再々読しておかしいと思ったところをいささかの感情的な表現も含め書き連ねてきて一応終えた。
indexは前立腺がんindexを参照のこと。
またまた不可思議な記述をみつけたのでブログに項を改め書くのが記述上の統一がとれるのだが発見の経緯よりこのサイトに書くこととした。
P.266に以下のように書かれている。
また中リスク群Bや高リスク群Aで、外部照射をえらぶのも適切といえない。長期のホルモン療法と外部照射を併用する治療法については、アメリカのRTOG-9209という研究が知られている。
これは高リスクの前立腺ガン患者にたいして、外部照射と2年間のホルモン療法を併用した治療法の研究だった。外部照射の線量は65～70グレーだったが、5年めには50%の患者が再発したのである。
文章自体も意味不明である。高リスクの治療法の結果より、なんで、中リスク群B（独特のリスク分類による）で外部照射をえらぶのも適切といえないといえるのだろうか。小学校から勉強し直したほうがいい。
まあ、全体的にこのような筆致なのでことさらに毒を吐いてもいまさらしかたがない。問題なのはRTOG-9209だ。面倒なので、検索していなかった。川崎氏の言及したRTOG 8610を確認の意味でさがしてすぐに見つかったこともあり、念のため検索した。見つかったものは"pancreatic cancer"、膵臓癌に関する論文である。
おかしいと思い、RTOG の Terminated Study List をみてみる。9209はPancreas : 膵臓 で間違いがない。もちろん、8610 は Prostate ：前立腺だ。どうしてこのような間違いをするのだろうか。どうせ、一般の読者は調べたりしないと思っているのだろうか。それとも元の文献はどうでもいいのだろうか。単純なミスとしてもとうてい看過できないものである。医学論文ではないのでそんなに厳密である必要はないが、間違ってはいけないところを間違えている。
そのような本を時間をかけて読み、論評したこと自体がバカバカしい。
2016/03/19