Dutasteride

掲示板でAGAとの関連 という表題で阿佐ヶ谷北5という人の投稿が2017年12月24日にあった。AGAという単語はしらなくて、テレビ朝日のタモリ倶楽部での銀座総合美容クリニックコマーシャルではじめて知った。すなわち、「AGA(エージーエー)とは、Androgenetic Alopeciaの略で「男性型脱毛症」のこと」。

単語の定義はさておき投稿にあった薬、アボルブを医療用医薬品 情報検索 | 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構でしらべ、アボルブ(一般名:デュタステリド) カプセル 0.5mg 添付文書を得る。

効能・効果 は 前立腺肥大症のみが書かれている。
デュタステリド - Wikipediaをみると商品名としてザガーロ(男性型脱毛症)と書かれている。次のように記載されている。

0.1mgカプセルおよび0.5mgカプセルは、男性における男性型脱毛症の治療薬として認定されているが、保険収載はされていない(自費治療・自由診療)[4]。抜け毛の防止効果はフィナステリドと上回ることが確認されており、フィナステリドでは不十分だった増毛効果もある。ただし毛根が失われた箇所については再生しない。増毛効果は、毛が長く太くなることと、単一毛根から複数の毛が生える事による。

添付文書には次のように書かれている。

2.重要な基本的注意
(3)本剤は、血清前立腺特異抗原(PSA)に影響を与えるので、以下の点に注意すること。
2 )本剤は、前立腺癌の存在下であっても、投与6ヵ月後にPSA値を約50%減少させる。したがって、本剤を6ヵ月以上投与している患者のPSA値を評価する際には、測定値を2倍した値を目安として基準値と比較すること。

このことが投稿における以下の文に対応する。

泌尿器科医師は、PSAを2倍したら問題ない。

Google Scholar で検索し、N Engl J Med. 2010 Apr 1;362(13):1192-202を見出した。
結論には以下のように書かれている。(Google翻訳で示す)

4年間の研究期間中、デュタステリドは、生検で検出された前立腺癌のリスクを低下させ、良性前立腺肥大に関連する転帰を改善した。

full textの討論には次のように書かれている。

この前立腺癌の発生率の減少は、グリーソンスコア5〜6の腫瘍を有する男性で主に観察された。

再び、ウィキペディアをみると、次のような記述があった。

デュタステリドの前立腺癌発生リスクに関する上昇・低下・中立的影響は確立していない。良性前立腺腫瘍の肥大および有病率を低下させることを示唆するデータがあるが、米国FDAはデュタステリドについて高悪性度前立腺癌のリスクが上昇する旨を警告している[8]

[8]でリンクされたアドレスにアクセスすると"Page Not Found"となるので、冒頭リンクされている5α-還元酵素トリプル阻害薬(英語版)、5α-Reductase inhibitor - Wikipediaを確認した。同じ表題、FDA Alert: 5-alpha reductase inhibitors (5-ARIs): Label Change – Increased Risk of Prostate Cancer". Drugs.com. Retrieved 2014-06-08.はリンクエラーとならない。さらに次の記述。

while 5-ARIs decrease the overall risk of developing prostate cancer, they have been found to increase the risk of developing certain rare but high-grade forms of prostate cancer.[19]

この[19]で示された次の論文をさらに確認する。
J Clin Aesthet Dermatol. 2016 Jul;9(7):56-62.full text

以下のように書かれている。

集計すると、5ARIの使用を調べた研究では、前立腺癌の発生率は増加しなかったが、疾患が検出されたときに高悪性度前立腺癌のリスクが増加する可能性が示唆されている。全体として、5ARI使用歴を有する前立腺癌患者の生存率に悪影響はない。

なお先に挙げたThe NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE の論文もこの論文で参照されている。

私はAGAではないので、増毛効果を願う気持ちはまったくもって分からない。もしそうだとしても、あえてFDAが警告しているリスクをとることはないだろう。

-----以下2017/12/29に追記
添付文書には以下の記述がある。

8.その他の注意
( 5 ) 白人を主体とした 50 ~ 75 歳 の男性 8231 例(生検により 前立腺癌が陰性かつ PSA 値 2 . 5 ~ 10 . 0ng ⁄ mL )を対象と した 4 年間の国際共同試験(日本人 57 例を含む)にお いて、 Modified Gleason Score 8 ~ 10 の前立腺癌の発 現率がプラセボ群( 0 . 5 %)に対し本剤群( 1 . 0 %)におい て高かった(相対リスク 2 . 06 [ 95 %信頼区間: 1 . 13 - 3 . 75 ])との報告がある 1)~3)
1) N Engl J Med. 2010 Apr 1;362(13):1192-202.
2) N Engl J Med. 2011 Jul 14;365(2):97-9.
3) Jpn J Clin Oncol. 2011 Mar;41(3):417-23.

1) は先にあげたNEJMの論文である。添付説明書にも高悪性度前立腺癌のリスクがあることは明確に記述されている。

2017/12/25