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四重人格
1998年10月6日
「四重人格」は「ザ・フー」のリーダー、ピート・タウンゼンドによって書かれたものだ。「ザ・フー」の音楽を好んできいていたわけではないが、何故か本箱の片隅によまれることなく、あった。（持っているのは1987年11月20日6刷であり、初版は87年3月31日）
10月4日（日）に一気に読んだ。馬のモチーフをベースに個人的な心情的な物語を美しい鮮やかなイメージにより定着させたものだ。個人の想い出が一見抽象的な描写の中に痛みをもって語られる散文詩のような１３編の物語。
例えば、「馬」の次の描写。
太陽が静かにひっそりと輝いていた。目の前に靄かかっているような気がしたが、実際にはそんなものはなかった。これこそ、何か悪い方向へ向かう感覚、そして興奮と期待の感覚である。
また、「テラスで飲んだシャンペン」の美しい描写。
彼はある友人にロンドンのどこかの新しい白い駅に連れて来られた。
現代的な官能の芳香がたちこめる。作り物の夏の一日が今まさに虚空に吸いこまれているところだった。
最後の物語「ラグーナ」の終わりで「馬に乗れ、完璧に操っている」と書く。馬は表現される美を示し、水際へと向かう。
しかし、「笑い声や叫び声」は消えず、消え去った馬に乗ったカップル（父と母）は再び現われ、「僕の孤独の時間」をこわすだろう。
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