ハイドロゲルスペーサー使用のRCT
The Urology Center of Colorado の Lawrence I. Karsh 氏を筆頭著者とする論文、Urology. 2018 May;115:39-44、full textを読んだ。画像誘導放射線治療(Image-guided radiotherapy; IGRT)でハイドロゲルスペーサー 1) を用いた場合とそうでない場合のランダム化比較試験の結果を報告したものだ。
画像誘導強度変調前立腺放射線療法（1回1.8Gyで44回、計79.2G）において、低リスク、中間リスクの患者222人がハイドロゲルスペーサー有は149人、無しは73人に2:1に無作為化された。2012年から2016年の間に20の米国の病院において実施された。
次のように書かれている。
「後期直腸毒性率が低くなり、腸および泌尿器の質が改善した」
さらに37カ月において「性交渉に十分な勃起」が可能なのはスペーサー有は66.7%、無しは37.5%だった。
詳細はfull text のTable 1 を参照のこと。
結論として以下のように書かれている。
前立腺 - 直腸ハイドロスペーサーの適用は、許容され、高い技術的成功率を有する比較的安全な技術手順である。スペーサー適用は、直腸の線量を著しく減少させ、直腸毒性の長期的減少、ならびに腸、尿、および性的QOLの改善をもたらす。
性的QOLの改善に関して、full text に「陰茎球線量の減少が対照群と比較して予期せぬ性的QOLの改善を説明する可能性がある」と書かれている。
日本においてRCTではないが、定位放射線治療に関して臨床試験が行われている。
前立腺癌に対するハイドロゲルスペーサー併用定位放射線治療の第II相臨床試験 2)
ハイドロゲルスペーサーの有効性と安全性を評価することを目的としているので性的QOLは評価外である。
1) 昭和大学江東豊洲病院泌尿器科の以下のページに説明がある。
・SpaceOAR®｜前立腺がん放射線治療のハイドロゲル直腸周囲スペーサ（SpaceOAR®）留置
「ゲルの材質は、主にポリエチレングリコールというもので、脳外科などでも同じ成分の別製品が使用されており、過敏性や刺激性のないことが臨床試験で証明されている」と書かれ、「ゲルの物質は、前立腺と直腸の間に留置されると放射線治療中（約3カ月間）はその形態を保ち、その後吸収され消失する」とのことだ。小線源治療の場合、留置の時期に関しては以下のように書かれている。
小線源治療でスペーサ留置を小線源留置の後に行うのは、スペーサ留置を先に行うと超音波画像で小線源の視認性が悪くなるからです。
2) がんサポートに次の記事が掲載されている。
・新たに保険収載されたハイドロゲルスペーサー 前立腺がん放射線治療の副作用低減が可能に
2018/11/16