昨年に引き続き開かれた高橋悠治、アキのコンサート会場である彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホールに久しぶりに行く。
アキさん演奏するモートン・フェルドマンの奥さんであったバーバラ・モンク=フェルドマンのゆるやかな時を感じさせる「砂漠の花の小さな時のなかで」もよかったが、何と言っても印象深かったのは悠治さんの曲「ピアノ」だった。
メロディを追うことができないような沈黙をはさみ、断片的なピアノの音の素材が続く。それはまるで、ピアノによるピアノに対する弔辞のようだ。意識的にメロディを消し去ろうとしているようだが、私の耳はそれに反して、音の流れを追い、メロディを組みたてようとする。終わりの部分に20世紀への決別を聴き取る。ピアノを素にした音楽の終焉。