1999年6月6日

早速聴いた。打楽器の沈黙をはさむゆるやかな演奏は従来聴いたものとかわるものではなかった。そのリズミカルでない打楽器の音が「竜安寺」の抽象的な空間に相応しいといえる。
沈黙と覚醒の時。
その刻まれる打たれる時の連続を背景にレアンドルのコントラバスのグリッサンドで演奏される低い唸るような音、それに被って出される何か陰隠滅滅とも感じられる声。その対照的な音は静謐な空間に垣間見せる情念といったものだ。「竜安寺」の庭の静的な空間へ至る動きの合ったであろう風景（例えば、人が熊手で丁寧に維持する前の乱れた白砂）を感じさせる。
しかしその表現は決して動的なものではなく、一つ一つが風にゆるやかに変わる描線といったものだ。

解説記事にレアンドルはCageは怒りとは無縁の人で"ever-powerful smile"と表現している。
そのsmileと共に竜安寺の庭をみてつくられた"Ryoanji"は演奏者により様々な風景をみせる素晴らしい曲だ。